
4月から作成が義務付けられる災害時要支援者名簿は、高齢者らの避難支援の基礎資料にすぎない。専門家は名簿を効果的に活用するためにも、平常時から地域でのコミュニケーションをより密接に図る必要性があると指摘する。
南海トラフ巨大地震による津波で市域の63%が浸水想定区域とされる大阪府高石市。町内会が自主的に防災活動を行う「自主防災組織」の結成率は100%で、防災意識の高い自治体として知られる。
災害時要支援者名簿には約1300人分を記載しているが、課題は少なくない。昨年11月に実施した津波避難訓練では約450人の要支援者を避難誘導したが半分にも満たない。
同市危機管理課の細川栄二課長は「まだ地域ごとに防災意識の濃淡があり、自主性をいかに引き出していくかが重要だ」と話す。ただ行政主導が強まれば、地域の主体的な動きが鈍る恐れもあり、関与の度合いが難しいという。
高石市では今後、高齢者らの災害時避難支援に備え、地域での見守りや声かけの強化を呼びかける。「平常時から地域でコミュニケーションがとれていないのに、災害時だけうまくいくはずはない」と細川課長は強調する。
防災に詳しい中央大大学院公共政策研究科の幸田雅治教授は「災害時に誰が誰を支援するかなどを具体的に決めなければ、名簿は生きてこない」とし、避難訓練などを通じて運用能力の向上に努めるよう求めている。