
国立病院機構大阪医療センター(大阪市中央区)は20日に記者会見を開き、2010年夏から現在までの間、入院患者114人から、多剤耐性菌「メタロ・ベータ・ラクタマーゼ(MBL)産生腸内細菌科」に属する7つの菌を検出したことを明らかにした。検出された病棟や菌の種類などが異なっていたため、楠岡英雄院長は「アウトブレイクの認識はなかった」と述べた。今後、遺伝子解析の結果を待ち、感染経路の特定を進める。【敦賀陽平】
同センターによると、10年7月、中心静脈カテーテル先端の血液の検体から、第一例となる「肺炎桿菌」を検出。その後、院内の感染対策チーム(ICT)や感染対策委員会で情報を共有するとともに、毎週ICTのラウンドを実施したほか、月1回、各部署で感染対策を担当する医師や看護師の会議を開き、感染の周知徹底や予防策の強化も行った。
だが、同年度は5人だった感染者の数は、11年度は28人、12年度は44人と増え続け、同センターでは同年春から、「カルバペネム系抗菌薬」を適正に使用するため、投与方法などで介入を始めた。ところが同年末、外科病棟でMBL産生菌との因果関係が疑われる死亡事例が発生。翌年度以降も月4、5人が感染し、収束の気配は見えなかった。
自力での解決が困難と判断した同センターは今年1月、阪大医学部附属病院の感染制御部に支援を要請。MBL産生菌は、感染症法に基づく報告義務はないが、同大の助言を踏まえ、大阪市保健所に連絡するとともに、国立感染症研究所(感染研)の疫学チームに調査を依頼したほか、感染症の専門家らから成る外部の調査委員会も設置した。
■外部委員会も「アウトブレイクに匹敵」
感染者114人のうち、死亡した患者は23人。このうち12人はがん患者だった。血液の検体から、高齢の女性患者2人については、MBL産生菌と死亡との因果関係が否定できなかった。既に転院した感染者に関しては、転院先の医療機関などに連絡したという。
MBL産生菌の検出は、特に外科系の病棟と救命救急センターに集中していた。外部の専門家の指摘から、排泄物や傷口からの感染などが疑われたため、大阪医療センターでは、尿やドレーンの排液容器を使い捨ての物に変えるなど、新たな対策を始めるとともに、職員に対しては、手洗いなどの予防策を改めて徹底するよう求めた。
同センターでは20日現在、MBL産生菌が検出された患者11人が入院しているものの、感染が原因と思われる症状は出ておらず、個室管理などの予防策を講じている。今後、新たに感染者が出た病棟については、新規の入院患者の受け入れを中止するとしている。
今回検出されたMBL産生菌は7種類に上り、見つかった病棟や時期などが異なったことから、楠岡院長は「連続性を認識できなかった」と語った。外部委員会もあくまで、「アウトブレイクに匹敵する」との位置付けだという。
同センターは、12年度の診療報酬改定で新設された「感染防止対策加算1」に加え、同加算1を取得する医療機関同士が年1回以上、互いの施設を評価し合う「感染防止対策地域連携加算」も算定している。だが、連携する医療機関の訪問でも、特に問題点は出なかったという。「MBLはまれなので、認識ができていなかった可能性がある」(楠岡院長)。同センターでは、近く開かれる連携医療機関との会合で、情報共有などを図るとしている。