
ドイツの高級車メーカー、BMW。同社の複数の車種が、米国でリコール(回収・無償修理)を実施することが分かった。
これは、米国NHTSA(運輸省道路交通安全局)が明らかにしたもの。BMWの9車種について、BMWの米国法人、BMWオブノースアメリカから、リコールの届け出を受けたと公表している。
今回のリコールは、エンジン内の部品の不具合が原因。NHTSAによると、BMWの「N55」型3.0リットル直列6気筒ガソリンターボエンジン搭載車の可変バルブタイミング機構、「VANOS」に使用されているボルトが、非常に稀なケースとして、緩んだり、脱落したりする恐れがあるという。
リコールの対象となるのは、米国で販売された2010‐2012年モデル15万6137台。『1シリーズ』、『3シリーズ』、『5シリーズ』、『5シリーズGT』、『6シリーズ』、『X3』、『X5』、『X6』、『Z4』の合計9車種が該当する。
もともとこの不具合は、中国市場で最初に発見された。中国や米国を含めた全世界では、およそ50万台にリコール台数が膨らむとの情報もある。
《レスポンス 森脇稔》
晴れ渡って、汗ばむ天気だった5月2日の東京。そう、今日は「iPhone 5 スリープ/スリープ解除ボタン交換プログラム」の受け付け開始日だ。事前に、筆者のiPhone 5 64Gバイト版が対象機か否かをアップルのWebページで確かめたところ、ばっちり当選(違う)。早速、Genius Barがある最寄りのアップルストア渋谷にWebから予約したのは4月30日だった。ひょっとしたら、おいらのiPhone 5が新品になるのかなぁ、いやならないだろなぁと、かすかな希望に胸を膨らませて井の頭線の急行に駆け込んで快晴の渋谷へと向かった。
とはいえ、今回のプログラムは2013年3月以前に製造されたiPhone 5が対象となるだけに該当機が多く、初日は相当な混雑が予想される。戦の前にまずは腹ごしらえとばかりに、「麺屋 大漁まこと」で人気の「伊勢海老そば」をかっこんでからアップルストア渋谷を訪れた。
アップルストア渋谷のGenius Barは2階にある。ご存じの通り、あまり広いとは言えない店内だが、すでに1階から人で埋まっている。恐る恐る1階奥の階段を上ったところ、そこには満員電車の車内に近い光景が広がっていた……。というのは少々大げさだが、人混みで思うように身動きが取れなかったのは事実だ。
軽いショックに打ちひしがれつつも店内を見渡したところ、青いシャツを着たスタッフが多数控えているのが目につく。まるで、iPhone発売当日のアップルストアのようだ。アップル側も、交換プログラム受け付け初日ということでこのようなシフトを敷いたのだろう。
●は、早くおれの番が回ってこい
ぼうぜんとしている筆者に声をかけてくれた心優しいスタッフに、しどろもどろで予約時間と名前を伝えたところ、いつも通り「壁際に立ってお待ちください」とのことで、陳列棚の前に身を移した。最も、壁際には筆者と同じようにサポートの順番を待つ多くの人々が巡礼者のように立ち尽くしている。かろうじて自分のスペースを確保し、回りの様子をうかがったところ、気のせいか表情が消えかかっている人が目立つ。いや、予約時間の10分前に来たし、まぁ30分も待てば順番が回ってくるだろうとのんきに構えていた筆者だが、無情にも時は過ぎていく。
「今はお客様がめちゃ多いんですよねぇ……」という先ほどのスタッフが去り際につぶやいた一言が筆者の脳裏に浮かんでは消える。そうこうしているうちに、スタッフに気色ばんで問い合わせる人が出始めた。かくいう筆者も満腹ではあるがすでにのどがカラカラで、足も棒になりつつある。iPhoneを見ると、予約時間からもう40分も過ぎている。50分は待った計算だ。
いや、この混雑ぶりだからやむを得ないよなと同情していたのもせつな、60分が経過したところでユナイテッドアローズと思われるショーツと風ぼうのスタッフ(ITmediaの本社はユナイテッドアローズの本部オフィス隣にある)に確認を願い出た。筆者の予想は(残念ながら)的中したようで、すぐに対応を始めてくれた。
●実際の手順はどうなの?
ここからは、交換プログラムの流れをざっと見ていこう。あくまで筆者の場合であり、必ずしもこのようになるわけではないが、事前の心構えと準備に役立ててほしい。
交換プロセス
01:今回のプログラムに該当するかiPhone 5のシリアル番号確認と代替機の要望確認
02:確認ツールをiPhone 5にインストール
03:カウンターに呼ばれる
04:前述のツールを走らせてスリープ/スリープ解除ボタンやホームボタンの動作を確認
05:iPhoneの外装を詳細にチェック
06:再びツールを走らせてハードウェアの動作確認
07:代替機を希望すると「iPhone 貸出契約書」の内容確認と署名
08:代替機のiPhone 5 16Gバイト版を準備、連絡先(メールアドレスや電話番号)をiPadに入力
09:修理完了連絡先の確認(メールか電話か)
10:「Genius Bar サービス見積書」と「iPhone 貸出契約書」、代替機を渡される
まず手順01では、スタッフが手持ちのiPadに(ユーザーのiPhone 5の)シリアル番号を入力して、交換プログラムに適合するか否かを確かめる。該当した場合は、データのバックアップをしているか、本体のリセットが済んでいるか(設定→一般→すべての設定をリセット)の確認がなされる。リセットがまだの場合はこの段階でリセット処理が行われる。そして、代替機の貸し出しを希望するかどうかも聞かれる。筆者の場合、着脱に精密ドライバーが必要な保護ケースを利用していたため、「本来はこれを外してから来店してほしいのですが…」と苦言を呈されたが、運良く取り外すことができたので事なきを得た。保護フィルムや保護ガラス、ステッカーなどを使っている場合も、事前にはがしておいたほうが無難だ。
上記が済むと、再び壁際に立って名前が呼ばれるのを待つ。名前が呼ばれると手順02に進み、机上にあるMacBookやMacBook AirからユーザーのiPhone 5に確認ツールをUSB経由でインストールする。導入が済むと、再度壁際に戻る形になるが、筆者は幸運にも待ち時間は少なかった。
手順03でようやくカウンターに着席でき、ホッとするのもつかの間、交換プロセスの説明と確認ツールの実行に移る。スタッフにより、スリープ/スリープ解除ボタンおよびホームボタンの動作確認がじっくりなされる。黒い割り箸のような専用工具を使って入念にチェックが行われる。
特に手順05の外装確認は、レンタカーの貸し出しのように入念にチェックが入る。この部分も前述の確認ツールに従って処理され、どの部分をどのように確かめるのか画面の指示に沿って進む。確認ツールはマルチランゲージ対応で、作業にムラが生じないよう工夫が施されているわけだ。
ユーザーのiPhone 5を預ける署名などはスタッフのiPad画面に指で入力する形だが、貸出機の契約書は紙が使われる。ここに署名と日付を書くことで貸出機(iPhone 5 16Gバイト版)の貸し出しが完了する。容量やカラーは選べず、筆者はスペースグレイが割り当てられた。注意点としては、修理完了の連絡がユーザーに来てから14日以内に貸出機を返却する必要があること(やむを得ない場合は事前承認により5日間の延長あり)、貸出機の紛失や破損時はユーザーが費用を負担する責任が生じる場合があることだ。
●果たして16Gバイトで運用できるのか!?
すべてのプロセスがiPadで完結しているわけではないが、一連の流れはスムーズで、ユーザーが慣れていれば短時間で済む。実際、今回は待ち時間を除けば30分弱で終わったのが救いだ。もし貸出機が必要なければ、アップルに電話連絡をして送られてくる送料支払済みの梱包箱にiPhone 5を入れて返送する「ピックアップ&デリバリー修理」を選んでもいい。
修理には4~6日ほどかかる模様で、「現時点では修理が集中しているのでもっと時間がかかる可能性もあります」と気になることもスタッフから言われたが、日頃使う機器だけに問題は先送りしたくない。
何より筆者が今一番気になっているのは、これまで64Gバイトで運用していたのに16Gバイトでアプリやデータをやりくりできるのかということ、修理が終わった頃に仕事の山が続いて引き取りに行けるのかということ、そしてサービス見積書の「再現のステップ」で「検証時はスリープボタン反応します」と記載されていたことだ……。
ともあれ、賽(さい)は投げられたわけで、運は寝て待てというわけではないが、まずは目の前に迫った連休を有意義に過ごそうと思う。最後に、今回得た教訓を以下にまとめた。みなさんの参考になれば幸いだ。
事前に必要な準備
・フィルムや保護ケースは外しておく
・裏面やホームボタンなどにシールを貼っている場合ははがしておく
・データのバックアップを済ませておく
事前に覚えておきたいこと
・修理期間はおおよそ4~6日
・持ち込み修理の場合、修理完了後に再びアップルストアに足を運ぶ必要がある
・ピックアップ&デリバリー修理では代替機の貸し出しがない
米IBMの年次カンファレンス「IBM Impact 2014」が米国ネバダ州ラスベガスで開催されている。2日目となる4月29日の基調講演では初日に同社が掲げた「Composable Business」の内容とその具体的な事例がユーザー企業とともに紹介された。
●データから得る洞察を行動に即つなげよ
ここ数年来、IBMはクラウドやソーシャル、モバイル、データアナリティクスといった様々なキーワードを掲げ、ビジネスの変革によるさらなる成長や新たな成功の実現を企業顧客に提案してきたといえる。前日に引き続いて基調講演に登壇したMobileFirst担当ゼネラルマネージャーのマリー・ウィーク氏は、ユーザー体験、柔軟性のあるインフラ、行動可能な洞察こそがComposable Businessの成果を創造するものだと語った。
Composable Businessとは、ITを含めたビジネスに欠かせない色々な要素(ビルディングブロックなどとも表現している)を組み上げて新しいビジネスモデルを構築することだといい、その要素はAPIを通じてクラウドなどからも提供される。将来的にはメインフレームや基幹システムなどに長年蓄積されてきた情報なども加わっていくとしている。
ウィーク氏によれば、Composable Businessに対する企業の意識としては以下の動向がみられる。
・ビジネスプロセスの自動化が重要と考える企業は35%以上
・企業内に蓄積されたナレッジの活用が重要と考える企業は45%以上
・変革を実現する企業文化が重要だと考える企業は50%以上
・クラウドによるテクノロジーが重要だと考える企業は86%以上
IBM自身もまた、世界約40万人の社員の知見をソーシャルやモバイル、クラウドによって生かす基盤を構築し、ビジネスの変革を積み重ねてきたという。「だからこそ、IBMはComposable Businessに挑戦する顧客を手伝う」(ウィーク氏)
●地方発の家電店が狙う全米ブランド
Composable Businessを体現する事例として、まず米国インディアナ州に本拠を置く家電・住宅機器販売のhhgreggが登場した。同社でeコマース事業を担当する上級副社長のケビン・ライオンズ氏は、「地方の家電量販店というイメージを変えたかった」と話す。
そのために同氏は、モバイルアプリケーションを通じて消費者の顧客に新たな体験を提供することで関係を深め、全米に知られる同社のブランディングに取り組んだ。2013年のクリスマス商戦をターゲットに定め、約4カ月前からモバイルアプリのリリースとその強化に繰り返し、同社のブランド醸成を進めていったという。開発にはIBMのWorklightなどを採用している。
モバイルアプリ開発で重視したのは、顧客に商品選びを楽しんでもらうことだ。「ストレス無くショッピングできることは当たり前。顧客がどのタイミングで購入を諦めるのかといったさまざまなポイント分析し、UIの改善や操作性の向上などを繰り返し挑んだ。顧客にプッシュするだけでもいけない。顧客が自ら楽しんでくれる工夫もした」(ライオンズ氏)
ブランドが本当の意味で顧客へ浸透するには、それなりの時間を要するという。しかし同社の場合、4カ月という短い期間で達成するために、モバイルアプリではショッピングだけでなく、ユーザー参加型のゲームも加えた。アプリストアでのダウンロード数ランキングの上位にも食い込んだという。
その結果、2013年のクリスマス商戦におけるオンライン販売実績ではコンバージョン率が30%アップし、売り上げは80%もアップしたという。
「Webサイト以上の体験を顧客に提供できたことが成功要因だ。今では社内の業務プロセスも顧客中心に回るようになり、変革を実現することができた」とライオンズ氏。現在では顧客先での設置サービスも提供して“リアル”なシーンでの顧客満足度の向上に取り組む。日本ではおなじみのサービスだが、セルフサービスが当たり前という米国の顧客にとっては斬新なサービスに映っているようだ。
●遺伝子解析で薬の副作用を防ぐ新サービス
続いて登場したのは、Coriell Life Scienceという新興企業。同社は、医薬品投与を受ける人の遺伝子を解析して副作用などの影響を調べ、その情報を担当医師に提供することで正確な投薬を実現するクラウドサービスを提供する。
同社CEOのスコット・メギル氏は、「米国の高齢者は平均22種類の薬を処方される。薬の副作用による死亡は死因では5番目に多く、投与される薬の半分は全く効果がないとの調査もある」と話す。薬の副作用のリスクを可能な限り軽減することができれば、最終的に社会保障に必要なコストの大幅な節減にもつながっていく。
ただし、遺伝子情報は人間にとって究極の個人情報ともいえるだけに、セキュリティレベルを極限にまで高めなくてはならない。また、分析と分かりやすいレポートの提供にはたくさんのコンピューティングリソースも必要になるという。
そこで同社は、解析などのデータの処理にIBM Business Process Manager、データベースにCloudantのサービス、IBMのセキュリティソリューションなどを採用し、これらのシステムをSoftLayerのIaaS上に構築した。
「こうしたサービスは10年前では不可能、3年前でも非現実的といわれた。それが、今ではクラウドで実現できるようになった」
●インフラを忘れるべからず?
IBM インフォメーション&アナリティクス担当上級副社長のボブ・ピッチアーノ氏は、データを分析するだけではなく、即座に行動につなげられる洞察を得ることが重要だと説く。具体的には、各種のデータソースから気づきを得るだけでなく、データの間に潜む文脈もとらえて意思決定につなげ、迅速に行動を起こしていくという。
そのための新たな機能として、IBMのクラウドサービスに地理情報分析やデータベース、レポート、数値予測、モバイル活用型コンテンツ管理などが加わった。さらに同氏は、IBMがコードネーム「BlueInsight」という次世代型のデータ・分析サービスの開発に着手していることも明らかにしている。
基調講演の終盤には、IBM ソフトウェア&システムズ担当上級副社長兼グループエグゼクティブのスティーブ・ミルズ氏が登場。セッションでは一貫してzEnterpriseやSystem z、フラッシュストレージ、日本で24日に発表されたばかりのPOWER8プロセッサなどハードウェアがメインに取り上げられた。
同氏は、これら製品がクラウドやデータ分析の高速処理、洞察の提供に貢献するものであるかを説明し、「優れたインフラを選択することは優れた情報技術を得るに等しい。ワークロードがいかなるものでも、インフラの選択は大切な要素だ」と締めくくった。
Pulse 2014やImpact 2014でクラウドへのシフトをより鮮明に打ち出しているIBMだが、その根底を支えるのはIBM伝統のハードウェア技術であるというのが、長年ソフトウェア部門の“顔”であり続けている同氏ならではメッセージだったようだ。