
病院に来る患者の持ち物や行動を見れば、どのような病気を患っているのか、すぐに分かる時がある。その代表的な例が強迫性障害だ。真夏でもマスクをし、両手に白い手袋をはめている。ポケットにはティッシュがいっぱいだ。ティッシュケースにひもを付けて首に掛けている人もいる。こうした人々がドアノブを素手で触ることは絶対ない。自分の皮膚に不意に他人の物が触れると身震いして驚く。典型的な細菌汚染強迫性障害だ。
「衛生強迫」は人間の進化過程がゆがんだ結果とも言える。細菌にさらされていた原始時代に、特に一生懸命になって体を洗っていた人々が多く生き残ったのだろう。その遺伝的特性が過度に強まった末裔(まつえい)が強迫性障害の患者ということだ。外出時にガスの火が消えているかどうか、玄関ドアに鍵がかかっているかどうか何度も戻って確認するのも強迫性障害だ。日常の点検行為が度を超えたケースだ。
几帳面さと強迫性障害は何が違うのだろうか。無意味に見える行動を繰り返す「強迫行為」をしないと不安に耐え切れず、そのために社会生活に問題が生じる場合は障害に該当する。学生が勉強前に机をきれいに片付けなければ集中できないというのは、きちょうめんさだ。だが、すぐに宿題をするのでもなく片付けのために徹夜するようだったら強迫性障害だ。人口の2-3%が大なり小なりの強迫性障害を抱えているとされる。
世界的な人気を誇るサッカー選手だったデビッド・ベッカムは、あらゆるものが偶数でなければ気が済まず、服はすべて一列に掛ける「整列強迫性障害」だ。ポップアートの先駆者アンディ・ウォーホルはありとあらゆるガラクタや古い電気料金請求書まで取っておく「保存強迫性障害」があった。整形手術を受ける人の中には、ささいな傷も非常に醜いと考える「身体醜形障害」の患者がいる。
健康保険審査評価院が強迫性障害の診療人数を分析したところ、5年間に13%増加したことが分かった。昨年治療を受けた約2万4000人のうち、半数が20-30代の若者だったという。強迫性障害は前頭葉から大脳基底核につながる脳の回路の異常により起こると言われている。青少年期に発症し、20代に顕著になることが多い。外部ストレスが原因で発症したり、症状が悪化するケースもある。学業に関するストレスや雇用不安が若者たちの脳に傷を付けているとも言える。
強迫性障害を抱えているとしても、知的能力は普通の人と変わらない。仕事も勉強もよくできる。強迫観念にさいなまれてはならないことも分かっているが、不安が尽きずに自分自身を抑えることができない。幸いなことに、薬や行動矯正治療を適切に受ければ半数以上の患者が社会生活を支障なく送れる。周囲の人々は本人のつらさを理解し、治癒の方向へ導いていかなければならない。