
東日本大震災の津波で石巻市立大川小学校の児童と教職員84人が死亡し、行方不明となった問題で、一部遺族が10日、提訴に踏み切った。遺族の一人、中村次男さん(39)は仙台地裁への提訴後、仙台弁護士会館(仙台市青葉区)で開かれた会見で「こういう(訴訟での)責任の取らせ方は、本当はおかしい」と声を絞り出した。市や第三者検証委員会との溝が最後まで埋まらなかったことが、提訴へ踏み切らせた一因にある。
これまで遺族は、石巻市教委との話し合いも続けたが、説明が二転三転するなど、誠実とは到底言い難い対応だった。そして昨年、問題を調べるために第三者検証委が立ち上がった。
しかし、「校庭で何があったのかを明らかにしてほしい」という遺族の思いと、検証委の「責任追及はせず、再発防止を目的に原因を調査する」という姿勢はかみ合わなかった。調査の矛盾点を遺族から指摘されることも多かった。室崎益輝委員長が「遺族と信頼関係が築けず、いい意味での検証ができなかった」と振り返るように、双方が意思疎通をはかれない中で正しい検証ができるはずもなく、核心部分に迫れないまま報告書が出された。
紫桃(しとう)隆洋さん(46)は「全ての資料を検証委に提出したが、やはり結果は納得できない。3年を前に、きちんとしてもらいたい」。あの校庭で何があったのか。遺族の真実を求める戦いは終わらない。(木下慧人)