
2010年12年に田中孝司氏がKDDIの代表取締役社長に就任してから3年がたち、2014年度の幕が開けた。2011年は「基盤事業の立て直し」と位置づけ、Androidスマートフォンを拡充し、9月にはMNP純増に転じた。10月にauとしては初のiPhoneである「iPhone 4S」を発売した。2012年は「成長起点の年」と位置づけ、3M戦略(マルチユース、マルチネットワーク、マルチデバイス)の第1弾として「スマートパスポート構想」を掲げ、「auスマートパス」や「auスマートバリュー」を発表。9月にはiPhone 5を発売し、「4G LTE」サービスも開始した。
【他の画像】
そして「新たなステージの初年度」と位置づけた2013年には、新たなユーザーを獲得すべく、「auスマートサポート」「auスマートバリューmine」や、タブレットとスマートフォンで通信量を分け合える「データシェア」などのサービスを続々と投入した。
そうした中で、2014年はどのような戦略で携帯電話事業を展開するのか。端末、ネットワーク、サービスを中心に、田中社長と、広報部 部長の櫻井桂一氏に話を聞いた。
●iPhoneの差分はネットワークが一番大きい
―― 2013年度を振り返っての手応えをお聞かせください。2013年度をどのように評価されていますか。
田中氏 秋にドコモさんがiPhoneを出されて、とんでもない戦いが来ると思ったけど、何とかしのぎきったというのが本音。お客さんがどのキャリアを選ぶかは、料金を除けば端末が大きい。日本市場はiPhoneが大きいじゃないですか。でもドコモさんがあまり慣れてらっしゃらないので、うまくいったのかなと。
LTEのネットワークは、他社さんは違うように言っているので何ともいえませんけど、(auが)ダントツだと自分では思っていて、訴求も確実に効いた。auスマートバリューもうまく働いて、それなりの結果を出せたと思っています。
―― やはりネットワークの効果が大きかったと。
田中氏 LTEのローンチを1年遅らせて800MHz帯に集中してきました。2GHz帯はダメだと言われたけど、2GHz帯も(実人口カバー率が)84%ほどには改善しているので。ネットワークはうまくできたかなと思っています。
―― 2014年3月14日に、800MHz帯の実人口カバー率が99%に達しました。13年3月時点の96%から3%を上積みするために、面積は1.5倍をカバーしています。
田中氏 3%のために、基地局だけでも何千と打ってるんじゃないかな。ここから上はすごいところ。(基地局を)死ぬほど打っても上がらない。
櫻井氏 地方は面積が広いけど、少ない人しかいない。それをカバーするにはたくさんの基地局を打たないといけないので、労力とコストに大きなエネルギーをかけました。「なぜそんな非効率なことを?」と思われるかもしれませんが、ローカルの人たちにとって通信の価値は都会の人たちと違うんです。物を手に入れよう、人を呼ぼう、情報を得ようといったときに、地理的に不利になってしまう。それを埋めるのに通信インフラが有効なんです。エリアを広げることで、通信という基盤を全国の人たちに届けることができたので、社会的な意味が強いですね。
―― ドコモ、au、ソフトバンクでiPhoneが出そろいましたが、あらためて、KDDIのiPhoneの強みはどこにあるのでしょうか。
田中氏 iPhoneの差分はネットワークが一番大きいと思います。2つ目がauスマートバリュー、3つ目がauスマートパスぐらいな順番じゃないですかね。auスマートパスを3つめ目にしているのは、iPhoneのauスマートパス対応が少し遅れたから。あと、iPhoneにはiPhoneワールドがあるので、僕ら自身でいじれるところは少ない。とはいっても、iPhoneユーザーの8割近くはauスマートパスに入られますね。一番効いているのは、故障時に2回まで無料になること。
―― この春から、ソフトバンクモバイルが900MHz帯でプラス10MHz(計15MHz×2)を使えるようになってLTEも開始します。ドコモは東名阪でも1.5GHz帯でプラス10MHz(計15MHz×2)を使えるようになり、ライバル2社のLTEが強化されます。そんな中で、御社はどのようにネットワークを訴求していくのでしょうか。
田中氏 800MHz帯はベースバンドだと思っていて、限りなくどこでもつながるようにします。2GHz帯も(実人口カバー率が)84%ぐらい行っているので、800MHz帯に重ねる。1.5GHz帯は10MHzで展開しています。あとは「B41」と呼ばれる、UQコミュニケーションズが使っている帯域(2.5GHz帯)を重ねていこうと。2GHz帯も広げていますよ。先日、記者さんに「2GHzもよくなりましたね」と言われました。
●Firefox OS、WiMAX 2+、Windows Phoneはどうなる?
―― 春モデルでは「Xperia Z Ultra SOL24」や「G Flex LGL23」などのファブレットを投入されましたが、どう評価されていますか。
田中氏 マルチデバイスの方向に行くのか、大画面(スマートフォン)がタブレット市場を食ってしまうのかでけっこう悩んだんです。タブレットは「データシェア」でアプローチした。ファブレットはXperia Z UltraやG Flexなどのモデルを出した。どっちかな? と思ってやったんですけど、まだハッキリしない。(auの)タブレットは前年比で倍くらい伸びています。まだまだ少ないけど。大きい端末(ファブレット)もそれなりに、ぐらいかな。大成功というわけではないですが、14年度は両方狙っていこうかと思います。
―― ここ最近、各社ともスマートフォンの新製品の数を絞りつつありますが、御社の2014年はどうなるのでしょうか。
田中氏 極端に絞ることはないですよ。「少し多いかなー」ぐらいの話じゃないですかね。
―― 「IS01」ような、とがった端末は今後も出るのでしょうか。
田中氏 やりますよ。ひとつはFirefox OS。
―― 2014年度中に出すという話が出ています。
田中氏 そう、今年度に。
―― Mobile World Congress 2014では、25ドルの端末も発表されるなど、Firefox OSスマートフォンは低価格路線が目立ちました。ただ、KDDIが出すFirefox OSスマホは、日本のユーザーが満足できる、とがったものにするということですよね。
田中氏 そう。廉価版って、売れないんじゃないの? Web OSの良いところを訴求したい。「あまり売れなくてもいい」と言うと怒られるかもしれないけど、別だと思いながらやりたい。
―― auのFirefox OSには、例えばFeliCaやフルセグなど、日本固有の機能も載ってくるのでしょうか。
田中氏 細かいスペックは覚えてないんで。うそを言いそうなのでやめておきます(笑)。危ないから。
―― HTCのスマートフォンが、ここ1年ほどお休みされていますが、次の夏モデルはいかがでしょう? 新モデルの「HTC One(M8)」も発表されましたが……。
田中氏 なかなか言えないけど、(HTCは)経営でいろいろあって……。HTC J Oneを出すときも、製造が相当大変だったんですよ。(ほかのスマートフォンと)少し違うでしょ? アルミだし、色を出すのも大変だった。今は少しお休みした方がいいんじゃないかというフェーズにいますけど、やめたわけじゃない。
―― isaiを出すなど、LGさんとのパートナーシップを強めていますが、HTCからLGに移ったわけではない。
田中氏 そういうわけではない。
―― WiMAX 2+内蔵スマートフォンはいかがでしょう。
田中氏 出す出す。(広報担当者を見ながら)出すって言ったよね? 出す出す。いつ出すまでは言ってないけど。
―― やはり夏に出てくるのでしょうか。
田中氏 なかなか鋭いね(笑)。余計なことを言っちゃうので。すいません、わきが甘いので。
―― もう何度も聞かれていると思いますが、Windows Phoneはどうなるのでしょう。Windows Phone 8.1も発表されました。
田中氏 今、どうだっていうのは、なかなかない。僕は大好きなんですけどね。でも相手もございますから。
(ここで話題は新OSに変わり)マスコミは2極論で書かない方がいいんじゃないかな。(製品を)出す前からたたくから。ドコモさんのTizenも、あんなひどく書かれてかわいそうに……と。1発目から当たるなんてありえないよね? いろいろなことにチャレンジしないとよくならない。「そんなの売れないんじゃないか」というのを、見もしないのに言ったらダメですよ、マスコミさんは。いいところを言わないと。あまりこういう説教してもしゃあないけど(笑)。
―― iidaやINFOBARなど、デザインに振った端末も、最近ご無沙汰しています。このあたりはいかがでしょう。
田中氏 いや、あのー、やめたわけではない。まだ……(しばし沈黙)……うまいですね(笑)。言わないですよ、これ。やめてない(キッパリ)。
―― 分かりました。その言葉がすべてを物語っているということで(笑)。
●LTE-Advanced、VoLTE、au WALLETで“価値”を訴求する
―― LTEや端末の差は、3社でなくなりつつあると感じています。そうした中で、KDDIとしてはどう差別化を図っていくのでしょうか。
田中氏 2014年は、いくつか価値を訴求できる技術の導入があります。1つはLTE-Advancedに向かっていくこと。もう1つは「VoLTE」が始まること。それに合わせて料金も(変えていく)。アッパーレイヤーでは、「au WALLET」を始める。これはどんどん進化していきます。2013年度は、同質化の中でキャッシュバックなどの戦いになったけど、バリューをちゃんと訴求して、次の世代のスタートになるんじゃないかと思う。面白いんじゃないですかね。各社さん違いが出てくると思いますよ。
櫻井氏 先日小山ネットワークセンターで実施した3.5GHz帯での実証実験は、見る人が見れば、かなり実用化に近いレベルの実験です。他社さんよりも、一歩先に次のネットワークに行けるだろうという自負を持っています。
auスマートバリューは全国125社213局と、auスマートパスは全国303社1069タイトルと提携しています。これは利用者が多いというだけではなく、パートナーにとってのメリットがあります。お客さんに失礼な言い方をしてしまうと、お客さんをパートナーに送客できるということ。パートナーにとって価値がある基盤を構築できたことが、他社のサービスと違うところです。月額372円(税別)でCP(コンテンツプロバイダー)さんとレベニューシェアするので、KDDIのもうけは、実は大したことがないんです。でもお客さんが増えることで、パートナーにメリットがある。そういう基盤を整備できたと思っています。
2014年は、基盤の上に新たな価値を加えていきます。その第1弾がau WALLETです。au WALLETは、ポイントカードと電子マネーから成るサービスですが、リアルな生活の中でメリットを作って、そこの消費活動が通信に返ってくるという還元を目指します。auスマートパスではバーチャルの世界(コンテンツプロバイダー)がパートナーですが、au WALLETではリアルな世界の人たちとも広げていきます。スマパスで作った世界をリアルな世界でも作っていこうと。(発表会で)流通規模1兆円と言っていましたけど、本音を言うと、auのもうけは大したことないんです。auスマートパスと同様、パートナーと一緒に、お客さんが使いやすい世界を広げていきたいですね。
―― VoLTEの開始時期はいつごろいなるのでしょう。
田中氏 みんなに聞かれるけど言っていない。ドコモさんが一番最初に発表されるんじゃないかな?
―― VoLTEの開始に伴い、通話料金の見直しも期待されます。
田中氏 選択肢が出る方向にいくんじゃないですかね。3G(ケータイやスマートフォン)のころは、選択肢だらけだったのでよく分からん、ということで、ソフトバンクさんがホワイトプランで音声を1本にされて、データ(パケット定額サービス)も3つくらいあった。これも(LTEになって)1本になった。シンプルな方がいいとなったけど、最近の議論で、7Gバイト制限がある中で3Gバイトしか使っていないという人もいるので、(7Gバイトと3Gバイトに)分けるべきだという話もある。でも、データ量ってどんどん上がってきていますよね。
社内に韓国の女性がいるんですが、1カ月に(スマートフォンで)12Gバイト使っていると話している。韓国の利活用が先に行っている。
―― LTE-Advancedが導入されると、7Gバイトなどの通信制限は緩和されるのでしょうか。
田中氏 あまりそれはリンクしていないですね。料金体系がたくさんあると、みんな説明しないといけない義務があります。そうなると説明時間が長くなる面もあって、そのへんの折り合いもありますね。社内の中ではまだ検討段階、フィックスしていないですね。
―― 最後に、2014年度をどのような年にしたいか、教えてください。
田中氏 次のステージの初年度にしたい。やっと新たなテクノロジーや、au WALLETにもチャレンジできるので、これを恐れることなく推進していきたいと思っています。ガツンと行くよ。応援をよろしくお願いします。
[田中聡(撮影:市原達也),ITmedia]