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イノベーションは常に起こせる――エアブレード発表から見えたダイソンの姿 - だっぢゅニュース

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2026.01.14|コメント(-)トラックバック(-)

イノベーションは常に起こせる――エアブレード発表から見えたダイソンの姿


 ダイソンの新製品発表には1つの特長がある。必ずといっていいほど「何人のエンジニアが何年をかけて開発した」という説明が付くのだ。国内の家電メーカーではほとんど語られない部分だが、ダイソンはさらに研究開発に投じた金額も公表する。ときには製作したプロトタイプの数、開発の過程で行った実験の回数までも明らかにする。

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 例えば4月9日に発表された「エアブレード」ハンドドライヤーシリーズは、「125人から成るダイソンのエンジニアチームが3年近くにわたり実施してきた集中的な研究開発と4000万ポンド(約68億円)の投資による成果」だ。プロトタイプの数は3300個以上、手洗い実験は2億1300万回以上も行われた。それを数えた人がいることにも驚かされるが、エンジニアたちの功績を評価し、そのための資金を重視する姿勢は新鮮だ。近年、コストダウンという“功績”ばかりが目立つ国内メーカーとは対照的に見えてしまう。

 同様の感想は誰もが抱くようで、新製品発表会の後で行われたラウンドテーブル(少人数のインタビュー)では、ダイソン氏に「日本企業へのアドバイス」を求める声が上がった。少し躊躇(ちゅうちょ)した後、ダイソン氏が話した内容は、「成功した大きな会社はイノベーションを伴う製品をローンチするのに大きな勇気がいる。しかしダイソンには、多くの、勇気と才能にあふれた若いエンジニアたちがいる」ということだった。

 自身もエンジニアであるジェームズ・ダイソン氏が4人の新卒エンジニアとともに「ウィルトシャーにやってきた」のが二十年以上前のこと(英国ウィルトシャー州のマルムズベリーで1993年に創業)。それが今では1000人を超えるまでになり、現在でもダイソン全社員の3分の1以上がエンジニアだ。今年も400人を採用するという。

 さらに同日発表された英国研究開発センターの拡張計画によると、新たに3000人の科学技術職を雇用する可能性がある。英国研究開発センターでは、新たに約2億5000万ポンド(約425億円)を投じ、4棟の研究開発施設を含むテクノロジー・キャンパスを建設するという。実現すると、現在は毎週300万ポンド(約5億1000万円)とされる研究開発費用は倍増することになるが、ダイソン氏は「若い人たちの中で、エンジニアや研究者になりたいという人が少ない。それを支援したい」と話した。

 若いエンジニアに対する支援はそれだけではない。ダイソン氏は、教育慈善団体「ジェームズダイソン財団」を設立し、全世界の若いエンジニアを対象に「日常の問題を解決するアイデア」を募集する「ジェームズ ダイソン アワード」(JDA)を実施している。一方で大学との連携も重視し、ケンブリッジ大学やインペリアル・カレッジなど英国内10校以上と協力体制を構築。「また大きな大学との共同プロジェクトを発表するつもりだ」という。「多くの大学に素晴らしい学科がある。しかし、素晴らしいアイデアを持っていても試作機を作る時間と場所がない。そこでインキュベーションの施設を提供する」。

●ダイソンのアプローチ

 ダイソンの研究開発を統括するUKデザインディレクター・アレックス・ノックス氏も、25歳のときにデザインコンサルティング会社からダイソンに転じた“若いエンジニア”の1人だった。当時は社員がまだ10人ほどで、ノックス氏は「『成功すると信じていた』と言いたいところだが、実は全く思わなかった。ただ、会社のアプローチが面白くて興味を持った」と振り返る。

 日本ではダイソンを“掃除機などの家電メーカー”と認識している人が多いと思うが、それは表面的に見える部分だけだ。ノックス氏によると、ダイソンは「空気を動かす」技術に特化した研究開発とエンジニアリングの企業だという。

 例えばエアブレードの発表を見た人は「英国ではハンドドライヤーがまだ普及していないのか?」と思ったかもしれない。新規参入なら成長余地のあるところを狙うのが当然だからだ。しかしハンドドライヤーが広く普及している日本に持ってきたことについてはどう解釈したらよいのか。「市場性を見誤った」と捉える人もいたかもしれない。

 ダイソンの製品開発は、市場性から入る形ではないようだ。ジェームズ・ダイソン氏が語ったエアブレードの開発経緯は、「あるエンジニアが10年前から“シート状の空気”の実験をしていた。その目的や詳細は話せないが、あるとき1人のエンジニアがこの空気を使って手が乾かせると気づいた」。つまり、最初は別の目的で研究開発していたが、その成果から別の用途が生まれたことになる。

 市場性に注目するのはこの後で、今ある製品に足りないものや「使う人が困っていること」を洗い出す。今回の場合は衛生面と手洗いの効率に注目し、世界最速の空気の層を使い、HEPAフィルターを通すことにより、既存のハンドドライヤーよりも衛生的で早く乾かせるという“強み”をプラスした。強みのある製品は一定のファンを生むため、成熟した市場でも存在感を示す可能性はあるだろう。そして自社の技術は特許で徹底的に守る。エアブレードの場合、出願中を含めた特許件数は110件で、それとは別にV4デジタルモーターでも100件を数えるという。

 若いエンジニアを集め、こと「空気を動かす」技術に関しては、自らテクノロジーツリーを延ばしていくような勢いで研究開発を進めるダイソン。空気を動かすためにデジタルモーター技術を磨き、空気の音がうるさいと言われればヘルムホルツ式空洞を用いた。開発した技術はジャンルの全く異なる製品にも採用されるため、むしろ研究開発の効率は良いのかもしれない。

 「われわれは研究開発に投資し続けている。そして、より効率の良い機械が実現すると信じている。イノベーションは常に起こせるものだ」(ダイソン氏)。


[芹澤隆徳,ITmedia]



引用:イノベーションは常に起こせる――エアブレード発表から見えたダイソンの姿



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2014.04.10|コメント(-)トラックバック(-)
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