
いち早く4Kディスプレイを搭載した東芝の「dynabook T954/89L」。気になる超高精細ディスプレイの表示品質を測色器と目視でじっくりチェックした。
【写真で見る:“4K”ノートPC「dynabook T954」の世界初ディスプレイを検証する】
既報の通り、東芝は15.6型4Kディスプレイ搭載のノートPC「dynabook T954/89L」を4月25日に発売する。ノートPCでは世界で初めて4Kディスプレイを搭載した製品だ(2014年4月16日時点で世界初/東芝調べ)。
今回は発売に先駆け、その試作機を入手したので、まずは気になる液晶ディスプレイの画質をチェックしてみた。ベンチマークテストを実施できる試作機ではなかったため、詳細なレビューは別の機会にお届けする。
dynabook T954/89Lが搭載するディスプレイは、解像度3840×2160ピクセル(4K)の15.6型ワイド液晶だ。高解像度ながら低消費電力のIGZOディスプレイを採用している。その画素密度は約282ppi(pixels per inch:1インチあたりのピクセル数)と非常に高い。同社の「dynabook KIRA」(約221ppi)をはじめ、富士通の「FMV LIFEBOOK UH90/M」(約262ppi)、Appleの「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」(13.3型で約227ppi/15.4型で約220ppi)など、高精細表示で知られるノートPCを上回る画素密度を誇る。
測色器を使った検証結果は後述するが、実際に間近で見てもピクセルの粒を感じることはない。15.6型ワイドとノートPCでは大きな画面に緻密で滑らかな映像が広がっている様はなかなか感動的だ。画素密度が高いことに加えて、輝度も十分確保されており、明るく見栄えがする。特にデジタルカメラで撮影した高画素の写真やPDFの細かな文字などで、細部の高い再現性を実感できた。
試作機には4Kカメラで撮影した4K動画サンプルも保存されていたが、水しぶきや揺れる木の葉、遠くから眺めた街並みの表現など、フルHD(1920×1080ピクセル)の15型ノートPCでは味わえないレベルの立体感と精細さに驚かされた。これを見た後にフルHD動画を再生すると、画像が粗く見えてしまうほどだ。
とはいえ、このディスプレイの魅力は写真では十分に伝えることができないので、ぜひ店頭で実機を確認していただきたい。
●高画素密度を使いやすくするユーティリティも用意
もちろん、これだけ画素密度が高いディスプレイだとWindows 8.1のデスクトップを等倍表示した場合、文字やアイコンが小さすぎてしまう。
試作機ではWindowsのdpiスケーリング設定が250%の拡大表示にセットしてあった。この設定ではアイコンが10ミリ程度/文字が2ミリ程度と大きめに表示され、問題なく操作できる。100%の等倍表示ではアイコンが4ミリ程度/文字が1ミリ程度と小さすぎるので、常用するのは厳しいだろう。ちなみに200%の設定では、同画面サイズのフルHD解像度と同じ大きさでアイコンや文字が滑らかに表示される。
つまり、4Kディスプレイだからといって、デスクトップの作業領域が15型フルHD液晶搭載のノートPCに比べて大きく広がるわけではない。ガマンして拡大率を低く調整すれば、デスクトップ画面はより広く使えるが、4Kのメリットは非常に高い画素密度がもたらすドット感のない表示の精細さ、高画素の写真や4K動画の再現性にある。また、ソフトウェアによっては拡大率を調整した際、レイアウトが崩れるものもあるので注意が必要だ。
こうした拡大率のカスタマイズはWindowsの解像度設定メニューから行えるが、dynabook T954/89Lの場合、独自の「東芝画面設定ユーティリティ」が用意されているので、これを使ったほうが設定が分かりやすい。「大きいテキスト(250%)」「最適(210%)」「小さいテキスト(195%)」「表示領域を最大化(100%)」の4つのプリセットから選べるほか、「カスタムサイズ」から拡大率をより細かく設定できる。
ただし、現状ではWindowsの仕様により、拡大率の設定を変更すると、ログオンし直す必要があるので少々煩わしい。今後はさまざまな画素密度のディスプレイがさらに増えることが予想されるため、Windows OS側の対応強化が待たれるところだ。
なお、高解像度を生かして、画面の左右端にサブ画面エリアを表示し、そこに動画や別ウィンドウ、アプリのサムネイルを並べて、手軽に切り替えられる仕組み「タスクスイッチャー機能」も備えている。
●ハリウッド基準の色調整をして出荷
dynabook T954/89Lは、単に解像度(画素密度)が高い液晶ディスプレイを搭載しているわけではない。3840×2160ピクセル(4K)表示の15.6型ワイドIGZOディスプレイは、液晶パネルの配向にIPS方式を採用し、広視野角を実現している。
さらに製造工程で1台ずつ個別に色調整を行い、ハリウッド映画などに採用されているTechnicolorの基準色に最適化するという手の込みようだ。出荷前の個別色調整はdynabook KIRAでも行われていたが、dynabook T954/89Lではそこから1歩進んで、Technicolorの認証を得た色調整がなされている。
Technicolorの簡易カラーマネジメントツールである「Chroma Tune for TOSHIBA」もインストール済みだ。これは使用するアプリケーションや作業環境に合わせて、色温度やガンマを変化させるユーティリティで、Technicolor(出荷時基準色)、Cool(色温度高め/ガンマ2.2)、Warm(色温度低め/ガンマ2.2)、Rec.709(HDTV規格/ガンマ2.4)、Full(ガンマ補正なし)の5つのモードから選択可能だ。
表示色は約1677万色、リフレッシュレートは60Hz(HDMI出力による4K表示は30Hz)に対応する。色調整済みで出荷されることもあり、カラーやモノクロのグラデーション表示は自然だ。色域のスペックは非公開だが、後述する測定結果ではsRGBに近かった。写真編集などの用途を考えると、Chroma TuneにHD動画向けのRec.709だけではなく、欲をいえば、sRGBの設定も用意してほしかったところだ。
ちなみにディスプレイの表面は光沢処理で発色が良好な半面、映り込みは発生する。また、LEDバックライトはノートPC用のエッジライト方式なので、画面端には輝度ムラも散見される。この辺りはさすがに外付けの高品位なディスプレイと同じユニフォミティ(表示均一性)というわけにはいかないが、通常の利用では気にならないレベルだろう。
●測色器で4Kディスプレイの表示品質を確認
エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1Pro」とソフトウェア「i1Profiler」を使用し、実機のガンマ特性と色域を確認してみた。測定時のディスプレイ設定はTechnicolorモードだが、i1Profilerでの測定前にChroma Tuneによる色設定はリセットされるため、どのモードでも結果は変わらなかった。
まずはガンマ特性だが、測定結果に表示されるRGBのガンマ補正カーブが3本とも重なり、入力と出力が1:1の関係、グラフでいえば右上がりの直線になるのが望ましい。結果はノートPCの液晶ディスプレイとしては良好だ。中間階調が少し下向きに補正され、青がわずかに離れているが、RGBの3本線がほぼ重なって直線を描いており、目視での自然な階調表現を裏付ける結果となった。
複数回計測した最大輝度は約330カンデラ/平方メートル、色温度は約6700Kという計測値で、明るく色温度も標準的な6500Kに近い。
この計測で作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、色域を確認した。色の付いた部分がdynabook T954/89Lのディスプレイで再現できる色の範囲で、薄いグレーの部分がsRGB規格の色域だ。結果を見ると、緑と赤の色域が少し足りないが、全体としてsRGBに近い色域を確保しており、ほとんどsRGB相当の発色といえる。カラーマネジメントに配慮したディスプレイとはいえ、さすがにAdobe RGBの広色域まではカバーしていない。
●東芝がREGZAで培った高画質化技術も搭載
この4Kディスプレイの能力を最大限に引き出すべく、東芝独自の高画質化技術を盛り込んでいるのも見逃せない。同社の液晶テレビに搭載した画像処理エンジン「REGZA Engine CEVO 4K」をPCの高ppi環境向けにチューニングし、同等品位をCPUとGPUのソフトウェア処理で実現したという「レゾリューションプラス機能」を装備しているのだ。この機能も冒頭で述べたような画質の好印象に貢献している。
レゾリューションプラス機能は、静止画と動画それぞれで高画質化処理を行う。まずは静止画だが、「微細テクスチャー復元」と「輝き復元」で質感の向上を図っている。微細テクスチャー復元は、画像の輝度成分に対してテクスチャ解析を行い、抽出されたテクスチャの特性に応じた復元処理を施すことで、高ppiディスプレイで細部が見えにくくなる現象を抑え、画像の解像感を向上させる機能。低解像度の写真も質感を復元し、解像感を向上させる。輝き復元は、色相ごとに輝き成分を解析し、失われた細かな光沢成分を復元させて、画像の質感を向上させる機能だ。
動画再生時には、記憶色を想定した色調補正の「カラーエンハンスメント」、輪郭を鮮明化する「シャープネス」、映像分析で明部と暗部のコントラストを見やすく補正する「ダイナミックコントラスト」、テクスチャのエッジを検出して強調する「テクスチャエンハンスメント」、低解像度を高品位に引き伸ばして表示する「アップスケーリング」といった高画質化技術が適用される。
ただし、利用する動画再生アプリや動画ファイルの解像度により、適用される高画質化技術が異なる点は注意したい。Windows Media PlayerやYouTubeでも一部機能は使えるが、4K動画でカラーエンハンスメント、ダイナミックコントラスト、シャープネスを効かせて再生するには「TOSHIBA Video Player」を使う必要がある。
実際にレゾリューションプラス機能を試したところ、静止画でも動画でも液晶テレビのように発色がより鮮やかになり、文字や細部の解像感が高まるのが確認できた。ソースが4Kのコンテンツに比べると精細さは落ちるが、HD動画のエッジやコントラストの強調効果は明らかにあるので、積極的に試してみることをおすすめする。
●4K dynabookでノートPCは次のステージへ
以上、dynabook T954/89Lがいち早く搭載したノートPCの4Kディスプレイをチェックした。表示が非常に高精細なことはもちろん、輝度、視野角、発色の面でも優れており、ノートPC内蔵のディスプレイが次のステージへ突入したことを感じさせる出来栄えだ。
今後は同様の4Kディスプレイ搭載ノートPCが他社からも登場すると予想されるが、製造工程におけるTechnicolor基準色への個別色調整や、東芝が液晶テレビの開発で培った高画質化技術といった点は、dynabook T954/89Lのアドバンテージになるだろう。
現状では4Kコンテンツが普及していないため、フルHD動画を再生しても物足りない部分があり、本領を発揮できるのはもう少し先になりそうだが、現時点でも高画素の写真や電子文書の文字などで、その実力を十分に味わえる。(これはRetina級ディスプレイを搭載した他機種でも同様だが)Windows 8.1のスタート画面やデスクトップ画面がきめ細やかに美しく表示されるため、通常のPC操作も気持ちがいい。
また豪華な4Kディスプレイに合わせて、4コア/8スレッド対応のCore i7-4700HQ(2.4GHz/最大3.4GHz)、AMD Radeon R9 M265X(専用グラフィックスメモリ2Gバイト)、IEEE802.11acの無線LAN、harman/kardonステレオスピーカー(DTS Studio Sound対応)を備えるなど、そのほかのスペックも充実している。実売価格は23万円前後(税別)の見込みと高めだが、ハイエンドな大画面ノートPCを求めるならば、是非検討したい1台だ。
[前橋豪(撮影:矢野渉),ITmedia]