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2025.08.16|コメント(-)トラックバック(-)

「勘と経験頼み」の職人集団から脱却 ソフトバンクホークスがデータ活用で目指すもの


 昨今企業でのデータ活用が注目されているが、「ビッグデータ」という言葉が流行する以前からデータ活用に取り組んできたのがスポーツの分野だ。とりわけ野球は「セイバーメトリクス」と呼ばれる手法も知られるように、スポーツの中でもデータ活用が比較的進んでいると言われている。

【画像:球団スタッフはPCとiPadでシステムを活用】

 プロ野球では一般的に、対戦相手や戦況などの分析を行うために、チャート表と呼ばれるスコアシートを使ってデータを記録する。こうして記録したデータを基に作戦を組み立て、各球団とも勝率アップを目指しているのだ。このようなデータ活用は試合だけにとどまらず、選手の獲得(スカウト)分野でも積極的に行われているという。

 そんな中、日本のプロ野球球団においてデータ活用の新たな取り組みを始めているのが福岡ソフトバンクホークスだ。同球団では、これまで個々のPCや部門ごとに管理していたデータ収集の仕組みを刷新し、スタッフ間でリアルタイムにデータを共有できる仕組みを構築したという。同プロジェクトに携わっている担当者に、取り組みの背景と狙いを聞いた。

●球団は「職人」たちの集団――KKD(経験、勘、度胸)から脱却へ

 言うまでもないが、プロ野球球団を運営しているのは選手や監督、コーチなどだけではない。「フロント」と呼ばれる経営層や運営・事務スタッフが、現場のスポーツマンたちの活躍を陰で支えている。

 中でもチームの成績に大きな影響力を持つのが、対戦相手や自チームのデータを記録・分析する「スコアラー」だ。彼らは試合における「球種」「配球図」「打球・方向」「対戦成績」などのデータを逐一記録し、分析結果をもとに次回の作戦立案などを助ける重責を担っている。

 「プロ野球ではこうしたデータ活用が50~60年前から行われてきた」と話すのは、福岡ソフトバンクホークスの三笠杉彦氏(執行役員 球団統括本部 副本部長 兼 企画室室長)。当初は紙による記録・分析からスタートし、近年ではスコアラーがPC向けの専用ソフトでデータを集計するのが一般的になっているという。

 だが今では、この手法も限界を迎えつつあったようだ。同球団が使っていたスコア記録用ソフトはPC向けのスタンドアローンなものだったため、収集したデータを球団内で共有しづらい課題があったのだ。「スコアラーはいわば“職人の集まり”で、彼らの仕事は『データを分析すること』。決して『情報を共有すること』が目的ではないので、これまで積極的に情報共有を行ってこなかった」と、福岡ソフトバンクホークスの関本塁氏(球団統括本部 編成・育成部 データ分析担当ディレクター)は振り返る。

 こうした職人たちによる“勘と経験”に頼りきりの球団運営では、スタッフが1人いなくなっただけで球団の戦力に与えるダメージは計り知れない。もっと効率的にデータを球団内で活用できる方法はないか――こうしてホークスは、データ活用システムの導入に向けたプロジェクトをスタートする。

●データをもとに話し合える“真のチーム”を目指して

 同球団がデータ活用システムの構築に乗り出したのは2010年のこと。自社でIT部門を持たないホークスでは、日本IBMとシステム開発会社のクロスキャットをパートナーとしてシステム構築を進めていった。

 だが、そのプロセスにおいても困難は少なくなかったようだ。「ITベンダーは当然、球団運営に関するノウハウを持っていない。一方、現場スタッフにとっても『どんなシステムがほしいか』など分かるわけがないので、現場とフロント、ITベンダーの3者で情報をキャッチボールしながらシステム構築を進めていった」(三笠氏)

 具体的には、データ活用基盤に日本IBMのビジネスインテリジェンス(BI)製品「IBM Cognos BI」を採用し、「χ援隊」(かいえんたい)と名付けたデータ分析/レポート配信システムを構築。スコアラーがPCやiPhone、iPadで入力したデータをリアルタイムで分析してチーム内で共有できる仕組みを整え、2011年に稼働開始にこぎつけた。

 システム導入の成果は徐々に表れたという。「従来、球団経営はスタッフ個々人のパフォーマンスに依存する部分が大きかったが、システム化によって共通のデータに基づき判断ができるようになった」と三笠氏は振り返る。また関本氏も「職人たちの『俺はこう思う』という考えをシステムで取りまとめ、そのデータに基づき方針を決められるようになった」と成果を語る。

●データ活用をさらに加速 1球ごとの球威も分かる動画分析も

 ホークスは今後、2011年から活用してきたχ援隊だけにとどまらず、さらなるデータ活用に向けた取り組みを進めていく考えだ。「χ援隊の構築・運用で得られたノウハウをもとに、さまざまな検討を重ねながらよりよいシステムを作り上げていきたい」と三笠氏は話す。

 また2014年に入ってからは、本拠地である「福岡 ヤフオク!ドーム」に球速測定装置を設置。従来からスコアラーが記録していた1球ごとのデータにとどまらず、ピッチングやバッティングの細かい挙動(ボールの回転数、初速や終速、軌道など)を自動でトラッキングする仕組みを用意し始めているという。「動画を解析して自動でデータ化することで、『今日は球に伸びがある』『変化球にキレがある』といったアナログな情報を数値に置き換え、“職人の目”を客観的に持てるようになるだろう」(三笠氏)

 「球団のフロントの役割は、現場の仕事を標準化して蓄積し、チーム全体のノウハウとして役立てること。ホークスが世界一を目指す上で、個人の力量だけに依存せずに継続的に成長できる仕組みを作っていきたい」(三笠氏)――ホークスは今後もITとデータの活用を通じ、世界に誇れるチーム作りを目指していく。

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2014.05.26|コメント(-)トラックバック(-)
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