3月14日に公開されたディズニー映画「アナと雪の女王」の勢いが止まらない。公開5日目で観客動員100万人を突破すると、今月23日には興行収入111億円を超え、国内の洋画アニメーション作品史上、1位になった。
公開から1カ月が経つが、勢いは衰えず、休日は「完売」の文字が並ぶ映画館も少なくない。字幕版を観賞した後に吹き替え版を見るという「おかわり現象」もその要因のひとつで、26日からは3D吹き替え版と共に「みんなで歌おう♪歌詞付き版」が全国85の劇場でスタート。劇中歌9曲に歌詞字幕が表示され、それを見ながら歌う「シング・アロング」形式で、ゴールデンウイークも「アナ雪」ファンの心をガッチリ掴んでいる。
そして、会場では歌声に負けないくらいの笑い声も。全編を通すと姉妹の絆を描いた感動作品だが、笑いも忘れないのがディズニーアニメ。子供から大人まで幅広い層から爆笑を取っていたのが、雪の女王・エルサが魔法で作ったしゃべる雪だるま「オラフ」だった。吹き替えを担当したのはピエール瀧(47)。テクノバンド「電気グルーヴ」として活動しているが、ミュージカル音楽は意外にも初挑戦。オラフが歌う「あこがれの夏」では、ピエールの顔を想像させない無邪気で愛らしい声色を披露。オリジナル版にも負けない絶妙な間とテンションでシリアスになりすぎそうな場面にうまく水を差し、会場の笑いを誘っている。
■ディズニーも映画批評家も太鼓判
NHKの朝ドラ「あまちゃん」では寿司屋の大将役を演じてファンが急増。かと思えば、昨年は映画「凶悪」で死刑囚の役を好演。そして今回は愉快な雪だるま役である。映画批評家の前田有一氏はこう話す。
「ピエール瀧さんと神田沙也加さんに関しては、プロの声優がやっているのかと思うくらい自然で違和感がありませんでした。役者さんが声優をやると、ジブリがいい例で、美輪明宏さん(もののけ姫)とか室井滋さん(耳をすませば)とか木村拓哉さん(ハウルの動く城)のような俳優のまんまになってしまうことが多い。でも、ピエールさんはまったくピエール瀧を想像させない。ミュージカルアニメ音楽が初めてという経験不足を感じさせなかった。しかも、コミカルな役ながら涙を誘うシーンもきちんと演じ分けていました。ディズニーは必ずオーディションをやって声優にはとことんこだわる。ピエールさんはそのディズニーが認めた“声優”といってもいいかもしれません」
“カメレオン俳優”の次なるキャラクターが楽しみだ。